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相続対象になるものとは? 相続財産の種類、相続対象外の財産についても紹介

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相続人は被相続人(亡くなった方)の相続対象となっているものを引き継ぐことになります。こうして財産は次世代へと承継されていくのですが、具体的にはどのようなものが相続対象となるのでしょうか。

当記事では相続財産に該当するものの内容を挙げて、将来相続人となる方が「何を相続できるのか」または「何を相続できないのか」が分かるように説明をしていきます。

相続の対象になる財産の種類

相続の対象になるものは多種多様です。一つひとつ調べていかなくても相続人は法律上の規定に従いそれらを引き継ぐことができますが、引き継いだ財産が必ずしもプラスの価値を持つものとは限りませんので注意が必要です。

プラスの価値を持つものは「積極財産」とも呼ばれ、不動産や現金、預貯金などさらにさまざまな種類の財産に分けることができます。

一方、マイナスの価値を持つものは「消極財産」とも呼ばれ、借金や住宅ローン、未払い料金各種がこれに該当します。

基本的には積極財産や消極財産も含め、すべての財産が相続対象となります。予想外のトラブルに巻き込まれないようにするためにも、被相続人がどのような財産を持っていたのかよく調査しておくことが大事になります。

不動産について

不動産は「土地」や「建物」のことです。これらは相続の対象となる財産であって、価格も大きな財産ですので相続手続において注意を要する財産です。

預貯金や現金のように均等に分けることが困難で、「相続人の誰か1人が取得する」「売却してその代金をみんなで分ける」「相続人で共有とする」などの方法から遺産分割を考えることになるでしょう。

また、次の土地や権利についても相続対象となります。

  • 借地権(土地を借りる権利)
    借りた土地に家を建てていたケースなどが考えられる。このときの借地権は、借主である被相続人の配偶者や子どもなどが相続するとき、地主の承諾なく取得することができる。
    ※遺言により相続人以外に譲渡されたときは地主の承諾が必要。
  • 農地(田や畑など農業に使う土地)
    農地の所有者を変更する場合、農業委員会の許可手続が必要になるが、相続による取得の場合は不要。ただし、登記申請による名義変更後、農業委員会への届出は行う必要がある。
    ※遺言により相続人以外に譲渡されたときは許可手続が必要。
  • 山林
    山林も相続対象の財産であるが、市町村長への届出は必要。なお山林に関してはその後の取り扱いで悩むことも多い。山林を貸し出す、林業を営む、レクリエーションに利用するなどの活用方法はあるが、収益化が難しい上に負担もかかる。そのような場合は売却や自治体に対する寄付なども検討すると良い。


なお、相続対象の不動産が賃貸物件である場合、そこから家賃収入が発生します。このとき、家賃収入の取り扱いには注意が必要です。
例えば、相続開始前に発生していた収入については相続財産に組み入れられますし、相続開始~遺産分割前の分については法定相続分に応じて相続人が取得。遺産分割後の分については、その賃貸物件を取得した方が取得することになります。

現金について

現金も相続対象の財産で、これが多く残っていることにより複数の相続人間で公平な遺産分割が実現しやすくなります。不動産やその他財産の取得によりバランスが大きく崩れそうな場面でも、現金の分配方法によりそのバランスを調整することができます。

また、現金であれば相続後すぐに使うことができます。換金などの手間が不要で、納税資金としても役立ちます。

一方、現金は額面そのままで相続税の計算を行うことになるため、一概には言えませんが、不動産などに比べると相続税の負担が大きくなりやすいです。「現金5000万円」と「現金5,000万円で購入した不動産」とでは後者の方が評価額は小さくなる傾向にありますし、特例などにより評価額を下げられるケースもあります。

預貯金について

預貯金(定期預金、当座預金、普通預金、通帳貯金、定額貯金なども同様。)も相続対象の財産であり、現金のように扱いやすい財産でもあります。

ただし、名義人である被相続人の死亡が金融機関に伝わることで口座が凍結してしまい、入出金ができなくなることもあります。このことにより相続手続中の資金に困るという場合は、相続預金の払い戻しを請求しましょう。

これは2019年から始まった制度で、遺産分割が確定していないタイミングであっても預貯金の一部に限り引き出すことが可能な場合があります。

なお、引き出し可能な金額は次の計算式により求まります。

払戻金額 = 預貯金残高×1/3×法定相続分

法定相続人が配偶者と長男・次男の3人であって預貯金の額が1,500万円であるとしましょう。このとき次男が払い戻しを求められるのは「1,500万円×1/3×1/4=125万円」となります。

株式について

株式も、上場株式・非上場株式の別問わず相続対象となります。

一般的には、「株式投資をしている」などと被相続人が言っていたのであればそれは上場株式を保有していたものと考えられます。上場株式であれば、証券会社などの口座を持っていると思われますので、まずは取引のあった証券会社を特定する作業から取り掛かることになります。特定が難しい場合は証券保管振替機構に問い合わせてみましょう。

一方、被相続人が会社を経営していたり身近な方が会社経営をしていたりするときは、非上場株式(市場に流通していない株式)を持っていることも考えられます。

家庭用財産について

家具や家電、衣服、自動車、貴金属などの動産も広く相続対象となります。

被相続人の自宅を調べていくと資産価値の低い小物なども多数出てくるかと思います。資産価値が低いものに関しては「形見分け」として遺産分割とは別に、特に思い入れのある方が取得するケースもあります。

これに対して自動車や貴金属、美術品など比較的価値の大きな物については相続税の計算にも響いてくる可能性がありますので、きちんとその価値を評価してもらいましょう。

事業用財産について

被相続人が個人として事業を営んでいたときは、事業用財産も多数抱えている可能性があります。事業に使っていた土地や建物、マシン、道具、原材料や製品、その他権利義務も基本的にはすべて相続対象です。

事業の内容や規模によっては非常に複雑な財産関係が構築されている可能性があり、大きな負債が残っているリスクも考えなくてはなりません。

ご自身だけで相続財産の調査に対応する必要はありませんので、司法書士や行政書士、弁護士、税理士のような専門家も頼りに財産状況を調べることを検討すると良いでしょう。

相続の対象にならない財産の種類

相続の対象にならない財産もいくつか挙げることができます。

「生命保険金」はその1つの例です。

被相続人が亡くなったことにより保険金が支給されますが、この金銭は相続財産に組み入れられて遺産分割の対象になるものではありません。契約上、受取人として設定された人物固有の財産です。

「遺族給付」も同様に考えることができ、相続の対象にはなりません。

遺族給付は法令に基づき特定の遺族が受け取れるものであり、その他の相続財産と同等に取り扱い、遺産分割の対象となるものではありません。

なお、「被相続人の一身に専属する権利」は相続対象ではありませんし、誰かが取得できるものでもありません。「一身専属権」とも呼ばれるこの権利は、特定の人物にしか認めることができず、移転ができる性質ではありません。
例えば被相続人が取得した国家資格に基づく立場・権限が相続できないのは当然のことです。身元保証人としての地位や離婚請求権、生活保護受給権、年金受給権、会社従業員としての地位も同様に相続の対象から外れます。

何が相続できて何が相続できないのか、気になる財産があるときは専門家に相談して解決することが推奨されます。